THE BUNKERS
A Endless Polyphony
project movie
プロジェクトの背景
project
日本を代表するゴルフ場
太平洋クラブ御殿場コース
2016年にコースの全面改修を開始する。
原設計者の加藤俊輔氏の意思を継ぎ、新たな設計者に選ばれたのは世界的名設計家のリース・ジョーンズ氏。そしてコース監修には松山英樹プロ。
2018年に全面改修完了。
株式会社太平洋クラブは、創立から50年の節目を迎えるにあたり、ファン・カルロス・ピント氏が撮影したバンカー写真集「THE BUNKERS」とREES’BUNKER」を発表する。本作品はメキシコ出身の新進気鋭カメラマン、ファン・カルロス・ピント氏が1年以上の年月をかけ、季節ごとに表情を変えるバンカーを、独自の目線で撮影した作品集。「THE BUNKERS」は“バンカー”というイメージからは、想像もつかないような、まるで京都の庭園の風景かと見紛うような作品から、雪に埋もれたバンカーに至るまで、モノクロ仕立てのドラマチックな作品集「REES’BUNKER」はB4サイズ横レイアウトのワイドな装釘でゴルファーの目線から写すバンカー、ドローンで上空からバンカーを捉えた、形状の美しさを映し出した写真集に仕上がっている。
Message
物事を捉える視点の新鮮さ、面白さ。
フアン・カルロス・ピント氏の写真を初めて見た時、最も強く感じた印象です。それこそ穴が開くほど幾度となく見て、数え切れないほど歩いたこのコースが、全く新しく別のもののように感じられました。長年ゴルフコースを撮影してきた写真家とは異なる着眼点から選ばれたアングル、芝や砂の質感、樹木、季節の移ろいや日々表情を変えていく富士山、御殿場コースを彩る全ての要素が、カルロス氏の目を通して表現されています。その作品は、コースの象徴であるリースバンカー、そしてそこから臨む景色をアートとして捉える、という私の念願をまさに形にしたものでした。
A fresh and captivating perspective on things. This was the impression I felt most strongly when I first saw Juan Carlos Pinto’s photographs. This course, which I had stared at and walked countless times, felt like something completely new and different. The angles chosen from a different perspective than that of a photographer who has been taking pictures of golf courses for many years, the texture of the grass and sand, the trees, the passing of the seasons and the many different faces Mount Fuji greets us with every day—all the elements that make up the Gotemba Course are expressed through Carlos’ eyes. This work was inarguably a dream come true! I have long sought to visually frame the course’s iconic Rees’ bunkers and artistically communicate the view seen from them. Now this has taken the best shape of art I could have ever imagined.
1977年、名匠・加藤俊輔氏設計により開場し、プロからも太平洋クラブのメンバーからも愛されてきた御殿場コースを全面改修しようと決断した時、さらなる高みを目指しながら、そのどちらもが楽しめものにするということが重要な課題となりました。その難しい依頼に応えてくれたのは、世界的名設計家リース・ジョーンズ氏と、監修者として加わった松山英樹プロです。両者の豊富な経験に裏付けされた知識やアイディアにより、リースバンカーを有する新生御殿場コース完成へと至ったのです。
When we decided to completely renovate the Gotemba Course, which was laid out by master designer Shunsuke Kato in 1977 and has been loved ever since by professional golfers and Taiheiyo Club’s members alike, it was important for us to make the course more enjoyable while aiming for even greater heights. It was the world-renowned course architect Rees Jones and Hideki Matsuyama, who joined the project as a supervisor, who responded to this difficult request. Their knowledge and ideas, backed up by their extensive experience, led to the completion of the new Gotemba Course with Rees’ bunkers.
バンカーは、その形、大きさ、広さ、深さ、位置、それらの無限の組み合わせがもたらす多様性によって、ゲームを面白くする戦略性を生み出します。同時に、自然と人の手の織りなす造形的な美しさが大きな魅力です。365日毎日が最高の状態であるために、日々徹底した管理を怠らないキーパーたちの仕事の賜物であると言えるでしょう。そのキーパーたちへの感謝の気持ち、一年を通して見続けてきたバンカーへの親しみのような感情がカルロス氏の写真から感じられます。
Bunkers, with their endless combinations of shapes, sizes, widths, depths, and locations, produce a variety of strategic features that make the game more exciting. At the same time, the sculpting beauty of nature blending with manmade architecture is a major attraction. This is the result of the hard work of the course keepers who maintain the bunkers in top condition every day of the year, 365 days a year. In Carlos’ photos, you can feel his gratitude to the keepers and his affection for the bunkers that he has been observing throughout the year.
また、バンカーは単純に避ければよいというものではなく、ターゲットとして捉えることでゲームを有利に進めることもあります。ゴルファーなら誰もがドキドキ、ワクワクする、毎回一度限りのドラマが生まれる場所です。バンカーの見極め方によって、ゲームの運び方も結果も大きく左右されます。感性や知性、技術を用い、どこでどの角度でどの向きに打つか、その時の風や砂の状態、落とす場所や転がり方をも念頭に置き、瞬間的な判断が要求される。写真にも共通することかもしれません。
Also, bunkers are not some kind of trap that you are better off avoiding; they can serve as targets that can get you an edge in the game. It is a place where every golfer can experience the thrill and excitement of a once-in-a-lifetime drama. The way you conceive the bunkers will greatly affect the way you play the game and the outcome. A bunker play requires quick-thinking, the use of sense, wit, and technique, and keeping in mind where to hit, at what angle, and in what direction, as well as the wind and sand conditions at the time, where to drop the ball, and how it will roll. This may be common to photography as well.
ゴルフコースの骨格は、ルーティングとランドスケープで決まると言われます。ルーティングは、どのように18ホールを結びつけるかというルートプランであり、ランドスケープはいかに自然の地形を活かし、景観と一体化させるかが問われます。
コースをラウンドする間、打つのは一瞬ですが、打つ以外の時間に何を見せ、何を考えさせるか、ほとんど誰も気が付かないような細部にまで手を抜かず設計されます。自然との戦いとも、自然との共作とも言えるゴルフコース、そしてこのリースバンカーを、カルロス氏が独自の視点で切り取りました。作品を通し、ゴルフコースにおける美しさの重要性を再認識すると共に、この進化し続ける御殿場コースの新しい顔をも見ることが出来たと思います。
It is said that the “bones” of a golf course is determined by its routing and landscape. The routing is the plan of how the 18 holes are connected on a course, while the landscape enhances the natural terrain and integrates it with the surroundings. During a round of golf, it only takes a moment to hit the ball, but what you show and what you make people think about when you are not hitting the ball is designed without skimping on details no matter how minuscule. Carlos has captured the golf course, which can be seen as either a battle with nature or a joint work with the same, and Rees’ bunkers from his unique perspective. Through this work, I believe that we managed to reaffirm the importance of beauty in golf courses and see a new face of this ever-evolving Gotemba course.
「THE BUNKERS」は、ゴルファーにとっても感動があり、
また、ゴルフの経験がない方にとっても心動かされるものであること、それが肝心だと考えていました。ゴルフに関する経験や知識の有無は、カルロス氏の写真の前では障害になりません。むしろ、それを乗り越えていく指標のようであり「THE
BUNKERS 」を体現しているようでもあります。この写真集が、カルロス氏の作品の素晴らしさと「Taiheiyo Club御殿場コース」の美しさを知って頂くきっかけとなれば、最上の喜びです。
株式会社 太平洋クラブ
代表取締役社長
韓 俊
I thought it was important that THE BUNKERS was inspiring for both golfers and those who have never played
the game before. Experience or knowledge of golf are not an obstacle in front of Carlos’ photographs. On
the contrary, they seem to be indicators that one can overcome these obstacles and embrace the experience
of “THE BUNKERS”. Nothing would give us greater satisfaction than to see this photo book be an opportunity
for people to get to know Carlos’ wonderful work as well as the beauty lying within Taiheiyo Club’s
Gotemba Course.
Shun Han
President and CEO
Taiheiyo Club, Inc.
写真家
photographer
Juan Carlos Pinto
フアン カルロス ピント
Juan Carlos Pinto
フアン カルロス ピント
1980年メキシコ、サカテカス生まれ。サカテカス自治大学で文学と言語学を学び、メキシコ国立自治大学のスペイン文学の修士号を取得。教師となり、中学、高校、大学で芸術、文学、人前で話すコミュニケーションを教授。ショートストーリーを書き、二冊の本を出版。5年間、ストーリーテラー(語りべ)となり、ラテンアメリカのフェスティバルに多数参加。 2011年に結婚のため、東京に移住。2015 年に写真の撮影を開始。テンプル大学ジャパンキャンパスで、アートとデジタル写真(I~III)のクラスに参加。2017年に、CUARTOSCURO(メキシコ)とMONOVISIONS PHOTOGRAPHY AWARDS(英国)の写真コンテストで入賞。2018年には、エプソン「meet up! selection」で優秀賞を受賞し、副賞のグループ展を5月にepSITEで開催。「全日本写真展2018」で東京都優秀賞を受賞。メキシコ・サカテカス州・政府の文化庁がアート集作成の公募で、「光の孤独な軌跡」が選出。3月~6月まで、サカテカス市文化センターで、「光の孤独な軌跡」の個展を開催。東京新聞(日本)、Metropolis(日本)、El Sol de Zacatecas(メキシコ)、CUARTOSCURO(メキシコ)などの新聞や雑誌に写真掲載。他、展示等で作品発表を精力的に行っている。
An Endless Polyphony
無限のポリフォニー
私にとって写真を撮ることは、被写体の外観の先にある世界と会話をすることであり、光の変容する力とある一瞬が、調和のとれた衝突によって現れる被写体の本質を探ることを意味します。
シャッターが押された儚い一瞬を超えて、時の流れが経験、欲望、笑い、涙、忘却、思い出、起こった事全て、そして、あり得そうで起きなかった事柄が、それぞれ写真の中で混ざり合います。同様に、未来への不安と期待、そして、未来から送られてきた合図を自身に投影する事さえも混在するのです。
私は沈黙を保ちながら、目よりも、魂、精神、そして心で被写体を見つめ、そこから出てくる声に耳を傾けます。シャッターを切るその瞬間に自身の声と被写体の声は結び付けられ、新しい可能性へと変貌を遂げます。
太平洋クラブ御殿場コースでの撮影を通じて、私はあるポリフォニーに出会いました。太陽を誘うヒグラシの鳴き声、池の中にいる鯉の優雅な泳ぎ、そして古代から遍在する富士山から生まれる様々な自然の声、彷徨った流星のように空へ放たれるゴルフボール、機械仕立ての蜂の羽音のようなカートの唸り、ゴルファーから聞こえる冒険をしている様な足音。この自然と人間の織りなす声が新しいポリフォニーとなっています。
その中で最も雄弁なのはバンカーの声です。その表面には、四季折々の自然がもたらした痕跡、動物の足跡、そしてプレイヤーの努力、躊躇い、安堵のすべてが刻まれていました。また、目に見えない世界の境界線まで広がるクリアな声で、バンカーはゴルフ場の日々を物語ります。
しかし、その物語は日々書き換えられています。
コースメンテナンスの方々の献身的な仕事により、小さな砂漠達は生まれ変わります。そしてまた白紙のキャンバスとなったバンカーに物語が刻まれます。まるで創造的な神話であるかのように、日々新しい姿を作り出すのです。私自身もこの神話に魅了され、撮影の度に新たな自分に生まれ変わる旅をしてきました。それは約1年半に亘りました。バンカーは私を誘い、今まで生きてきた人生の思い出、言葉、願い、アイデア、歌、そして視点を引き出します。
晴れの日には、溢れ出た光と影の流れの変化を求め歩きました。
曇りの日には砂の表面を隅々まで調べ、比喩と他の時代の声を探しました。雪の日には目の前が見えなくなる時もありましたが、記憶が道を案内してくれました。また富士山頂から顔を出す朝日の光によって、何度もバンカーの前で祈りを捧げる様に膝をついていました。
撮影を通してこの刺激的で幸せな会話は1年以上続きました。
皆様が手にしているこの写真集は、いわばその日々の記録です。
この撮影を通して太平洋クラブ御殿場コースの全面改修のシンフォニックな偉大さを理解しました。また、規律のある運営を目の当たりにし、勤勉な方々の温かさと優しさに直接触れる事が出来ました。
このプロジェクトを企画、推進、管理、支援をして下さった方々全員に、心から感謝致します。皆様の声は私の記憶に刻まれており、この写真集の中でとても大切な事となっています。今後私の人生にどの様な事が待ち受けているのかは分かりませんが、明確な事がひとつだけあります。それは、私がカメラを構えて、世界と新たな会話をしょうとする度に、太平洋クラブ御殿場コースでのバンカーの撮影の経験が私の一部になっている事です。ここで撮影した写真の全てに私が反映されているのです。
私は今でも記憶と夢の中にある太平洋クラブ御殿場コースを歩き回って、まだ存在しない写真を求め続けています。この写真集を通じて、皆様が自分自身を発見し、このポリフォニックな会話に自身の声を織り成して頂けたら幸いです。
To me, taking a photograph is about conversing with the world beyond the physical presence of the subject; it is about eliciting the true nature of that subject as it emerges through the harmonious collision of a split second with the transforming power of light. A photograph transcends that fleeting moment when the shutter clicks, and testifies to experiences, desires, laughter, tears, oblivion, memories, everything that happened, and everything that could have but did not happen—each of them blended together in the passage of time. What is more, the anxiety and anticipation of the future, and even cues taken from times to come are projected onto myself and likewise partake in this mix. I eye my subject with my heart, soul, and spirit, and in absolute silence I listen to the voice that comes out of it. The moment I release the shutter, our voices twine together and turn into new possibilities. During my photo shoot at Taiheiyo Club’s Gotemba Course, I was able to witness a particular polyphony. The melancholic sound of evening cicadas longing for the sun, the graceful swim of koi in the pond, the distinct voices of nature from the timeless and omnipresent Mount Fuji, the golf balls flying like shooting stars wandering into the sky, the carts humming like some kind of mechanical bees, or the sound of the golfers’ bold footsteps. This interweaving of nature and human voices is a completely new polyphony for me. The most eloquent of them is the voice of the bunkers—bunkers that bear on the surface the traces of nature in all four seasons, animal tracks, and all the hard work, hesitations, and contentment of the players. And, with a clear voice that spreads to the boundaries of the invisible world, the bunkers tell the story of everyday life on the golf course. But that story is a different story with each passing day. Thanks to the hard work and dedication of the course maintenance staff, these small deserts are reborn into blank canvases on which a new story is about to be written. The bunkers take on new forms every day like in a creation myth. Inevitably, this myth became the object of my fascination and allowed me to reinvent myself with every photo I took. It was a journey that lasted for about a year and a half. The bunkers held the space for me to unfold myself into, and surfaced the memories, words, longings, ideas, songs, and perspectives I had shaped throughout my life. On sunny days, I would walk in search of flow changes in the interplay of light and shadow. On cloudy days, I would examine every inch of the sandy surface, looking for metaphors and voices from other times. On snowy days, I would let my memory guide my way whenever I could not see what was in front of me. I also found myself many times kneeling like in prayer in front of the bunkers, as the morning sunlight peeked out from the crest of Mount Fuji. These stimulating and happy conversations continued for more than a year throughout the shoot. This photo book you hold in your hands is a memoir of those days, so to speak. By doing this photo shoot, I came to understand the symphonic magnitude of the total renovation of Taiheiyo Club’s Gotemba Course. I was also able to witness the disciplined management of the project and directly experience the hardworking people’s warmth and kindness. I would like to express my sincere gratitude to all those who planned, promoted, managed, and supported this project. Your voices are etched in my memory and make an especially important part of this photo book. I do not know what the future holds for me, but one thing is certain: from now on, every time I pick up my camera and try to start a new conversation with the world, the experience of photographing the bunkers at Taiheiyo Club’s Gotemba Course will be part of my voice, for I am reflected in each and every photo I took there. I still walk around Taiheiyo Club’s Gotemba Course in my memories and dreams in search of photos that do not yet exist. It is my hope that you will discover yourself reflected in this photo book and that you will weave your own voice into this polyphonic conversation.
書籍概要
Book Design
- 書名
- THE BUNKERS
- 販売価格
- 19,800円(税込み)
- 背開き製本
- 横225/縦285
作品概要
Photo
- Title: THE BUNKERS
- Number of prints 10
-
Format
10 x 6.6 inches, A4 paper, signed on verso
12.95 x 19.02 inches, A3ノビ paper, signed on verso - Date photos were taken 2019–2020
- Place photos were taken Gotemba, Shizuoka, Japan
- Year of the prints 2021
- Paper Hahnmühle Agave
-
Price
A4 55,000YEN-77,000YEN
A3ノビ 110,000YEN-154,000YEN
書籍概要
Book Design
- 書名
- REES’BUNKER
- 販売価格
- 19,800円(税込み)
- 背開き製本
- 横370/縦265
本のレイアウト・装丁担当
designer
-
猿山 修Osamu Saruyama
1966年生まれ。
デザイン事務所「ギュメレイアウトスタジオ」主宰。グラフィック、プロダクト、及び空間デザインを広く手掛ける他、古陶磁の展示販売、演劇や映像及び展覧会のための作曲・演奏活動も行う。