料亭も舌を巻く。精進料理の美味しい宿坊5選!
2017年6月29日
宿坊。神聖な場所だとはわかってる。心身を整えに行く場所だともわかってる。それでもやっぱり、美味しいものを食べたい。美味しいもの、大好き。
ということで、精進料理が美味しいと評判の宿坊を坊主が厳選してご紹介します。*料理の内容は季節によって変わります。
目次
- 1.精進料理とは?
- 2.一条院(和歌山高野山)
- 3.淵之坊(長野善光寺)
- 4.越志旅館(長野戸隠)
- 5.東學坊(神奈川大山)
- 6.覚林坊(山梨身延山)
仏教の教えに基づいて調理される、精進料理
ところで、そもそも精進料理って何のことかご存知でしょうか?
(いや、知ってる。とか、いや、興味ない。という方は読み飛ばしてください)
精進、つまり悟りを開くための修行の一つである「贅沢せず粗食で過ごす」という行と、「殺生はダメ」という仏教の教えに基づいて、肉や魚などの動物性の食材を使用せず、穀物・豆類・野菜などの食材だけで調理する料理のことです。
高野山で真言宗をはじめた弘法大師・空海が冬の保存食として作った高野豆腐や、雁(がん)もどきに代表される、肉や魚風に調理した「もどき料理」などが有名です。
また、五葷(ごくん)と呼ばれるネギ科ネギ属など精のつく野菜の使用を禁じています。きついにおいと性欲を刺激するものは修行の邪魔!ということです。なんともツライ修行です。
何を五葷とするかは時代や地域によって異なりますが、例えば現在の曹洞宗永平寺では、にんにく、ねぎ、にら、玉ねぎ、らっきょうが五葷です。
*永平寺レシピなんてのもあります
ちなみに、お坊さんの資格を取るため(そう、資格制なのです)まだ寒い三月に根菜中心の精進料理だけで数週間の修行をしたところ、お通じが良くなるわ、血行がよくなってからだが温まるわで、「自然、スゴい!」といった感じでした。大地の恵みに感謝する機会が減っている今の世の中でとても貴重な経験だと思いますので、数日間の精進料理生活、おすすめです。
閑話休題。
高野山 一乗院 (和歌山)
~ユネスコもミシュランも認めた高野山で、嘘偽りのない本物の味を味わう~
京都の料亭から職人を採用しているという一乗院。奇をてらわず、丁寧に出汁を取った見た目も美しい料理が、和島塗の膳に盛られて提供されます。
仏教美術の至宝と言われる曼荼羅や「昭和の快慶」と評された松久宗琳氏の観音像、狩野派の襖絵など、貴重な宝物や美術品も鑑賞できるので、文化財に囲まれて過ごせる、と海外の方にも評判です。日本人初のノーベル物理学賞受賞者である湯川秀樹氏などの著名人も足を運ぶなど、一度泊まってみたい憧れの宿坊といえます。
メロディをつけて唱えるお経である声明を取り入れた朝勤行や、真言密教独特の瞑想法である阿字観(あじかん)や写経も体験できます。
特集本で勉強してから行くのも良し
時間が無くて行けない!という人にはレシピ本も
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善光寺 淵之坊(長野)
~一生に一度は詣りたいと言われた善光寺で、伝統と革新の二つの味を愉しむ~
伝統的な精進料理と、先代の女将が生み出した創作精進料理との融合が楽しめる淵之坊。
善光寺や仏様からヒントを得て作られた品々は、「満月」、「石餅の花」など風情感じさせる名前に、趣向を凝らした盛り付けが施されており、味わいながら料理誕生の背景を楽しむのもオツです。
日本最古の霊場である善光寺の起源を語り継ぐ唯一の宿坊でもあります。
長野県宝に指定され、善光寺縁起を絵で物語る『善光寺縁起絵図』と『縁起絵伝』が所蔵されており、他では聞けない善光寺の歴史をここで知ることができます。
宿坊には珍しく個室を用意しているほか、美肌効果が望めるトルマリン風呂や麦飯石を使用した風呂にアメニティの用意など、初心者にもおすすめの宿坊です。
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戸隠 越志旅館(長野)
~天照大神を天岩戸から誘い出した神々に囲まれて食す蕎麦~
戸隠の山の幸はもちろん、名産の玄そばを石臼挽きしたそばも絶品の越志旅館。
手打ちそばが好きなだけ食べられる「手打ち蕎麦食べ放題プラン」や戸隠のオリジナル料理をプラスした「戸隠大満喫プラン」など、食通も思わず唸る内容です。
また、江戸時代、祭礼のときに振舞われていた精進料理「戸隠古流祭礼御膳(とがくしこりゅうさいれいごぜん)」もいただけます(要予約)。
宝光社や火之御子社など五社を巡拝して御朱印をいただいてまわる「戸隠五社巡り」を楽しむ人も多いようです。戸隠でいにしえの日本を存分に味わうのはいかがでしょうか。
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大山 東學坊(神奈川)
~日本遺産に認定された大山詣りに思いを馳せながら、自然の恵みに舌鼓を打つ~
創業・慶長5年。西暦にすると1600年。徳川家康が関ケ原の戦いで勝どきを上げたその年から続く『御坊料理・東學坊』は、絶品の豆腐料理が頂ける老舗宿坊旅館です。
大山で磨かれた水を使用して、手作りで作られた自家製「大山豆腐」を使用した豆腐懐石の美味しさには、これを目当てに大山まで来るというリピーターの気持ちにも納得です。
食後は露天風呂に無料で入ることもできます。鈴川の桜や大山寺の紅葉など、四季を彩る景観を眺めながらの露天風呂は、日頃の疲れを癒してくれること間違いなし。新宿から電車とバスで一時間半程度と、都心からのアクセスの良さも魅力。
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身延山 覚林坊(山梨)
~日蓮宗総本山で、尽きることのない創意工夫と宿泊者への想いに感銘を受ける~
「湯葉フォンデュ」など創作湯葉精進料理の数々が堪能できる覚林坊。お米は島根県奥出雲町産のコシヒカリ『仁多米(にたまい)』、手作りの納豆は地元身延町特産で『幻の大豆』と呼ばれる『あけぼの大豆』を使用。その他の食材も旬の食材を厳選しており、地元の料理コンテストで何度も入賞するのも納得です。
開祖であり「目の神様」として慕われる日朝上人直伝の目薬をはじめ、豆乳のアイスクリームやゆばの桜蒸しといったオリジナルのお土産や商品にも力を入れています。
夢想国師作の日本庭園・心地池は身延町の文化財に指定されているほか、山梨名産ワインの入浴剤を使ったワイン風呂で芯まであったまることもできる盛りだくさんの宿坊です。
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いかがでしたでしょうか。
ちょっと近寄りがたい、とか、なんだか怖いと思われがちな寺社仏閣ですが、料理という身近なトピックを通じて触れてみると、ハードルが下がるのではないでしょうか。
今回ご紹介した宿坊は食事だけの利用も可能ですので、是非気軽に足を運んでみてください!
ライター情報
MBAアントレ坊主
漫画、麻雀、ゲームを愛する一方、絶望的な写真のセンスの無さに苦悶中の、浄土宗某寺副住職。金融機関の本店、シンガポール拠点での勤務、パリ郊外の経営大学院でのMBA取得を経て、ENYSiの創業に参画。