<日本遺産>松尾芭蕉も生き返る「出羽三山~生まれかわりの旅~」
2017年7月3日
「あぁ、夏休みの計画そろそろ立てなきゃ。次はどの日本遺産に行こうかなぁ~。やっぱ日本遺産ってワクワクするゥ~。ユミコと行き先相談しよッ!」
近ごろこんな女性が増えてるとか、イヤ、いないか。
日本遺産(Japan Heritage)とは、2015年にはじまった「地域の歴史的魅力や特色を通じて文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として文化庁が認定する」制度で、今日現在54件のストーリーが登録されています。
「保護」が目的の世界遺産と違い、「点在する遺産を面として活用し、発信する」ことで地域の活性化を目指しています(詳細な解説はコチラ。)
今回はそのなかでも、かの松尾芭蕉も経験したという山形県鶴岡市の出羽三山にまつわるストーリーをプチ体験してきたのでレポートしたいと思います!
目次
- 1.現在の羽黒山、過去の月山、未来の湯殿山を歩き、「生まれかわる」
- 2.松尾芭蕉が出羽三山で蘇った?
- 3.旅人を受け入れた手向(とうげ)地区の宿坊街
- 4.山伏が創作し、ユネスコが認めた精進料理
現在の羽黒山、過去の月山、未来の湯殿山を歩き、生まれかわる
まず、出羽三山のストーリーの概要は以下の通りです。
- ・約1400年前、時の天皇の子である蜂子皇子(はちこのおうじ)が羽黒山を開いた。日本独特の山岳信仰である修験道(しゅげんどう)の聖地となった。
- ・三山とは、最も低く(414m)人々の現在の幸せを祈る羽黒山、最も高く(1,984m)死後の安楽を祈る月山(死後の世界は過去とみなされた)、お湯の湧き出る赤い巨岩をご神体として新しい命の誕生を祈る湯殿山(1,504m)の三つの山。
- ・三山を巡り、自然への畏れや敬意を感じながら心身を潤し、明日への活力を得る「生まれかわりの旅」が江戸時代に庶民の間で広がった。
まさにパワースポット巡り。江戸時代も、「あァ~、色々とやってらんね。気持ち切り替えに旅行すっか!」という人、多かったのかもしれません。
松尾芭蕉が出羽三山で蘇った?
俳句界のレジェンド、松尾芭蕉。かれの代表作であり旅行記のはしりである「おくのほそ道」。
「月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也」の序文で始まる本書の中に、芭蕉が出羽三山に登った記録が残されています。
深川から大垣へ。芭蕉のあしあと
せっせと俳句を詠みながら旅をしていた芭蕉ですが、長旅の疲れからか、山形に着くころには俳句のキレがなくなってしまいました。が、「出羽三山生まれかわりルート」を走破した芭蕉はパワーチャージ完了。俳句のキレも見事に戻ったとのことです(俳句学者談)。
まさに、生まれかわりの出羽三山。ブラボー。
近頃アイデアのキレが悪いというクリエイターのみなさんも、一度試してみてはいかがでしょうか。
筆者は、運動不足からか便のキレがイマイチでしたが、羽黒山登っただけでお通じが良くなりました(こころなしか)。
旅人を受け入れた手向(とうげ)地区の宿坊街
「おくのほそ道」の大ヒットを受け、江戸時代には約15万人もの人々がこの地を訪れたようです。そうなると必要なのが、宿。
羽黒山麓の手向地区は江戸時代には300を超す宿坊が軒を連ね、今も山伏が運営する宿坊が30軒以上あり、日々参拝客を迎えています。
ちなみに山伏とは、役小角(えんのおづの)を開祖とする、山の中で自然の霊力を身につけるべく修行する人たちのことです。よく、ほら貝をブォ~っと鳴らしている、あの人たちです。
山伏による月山のツアーがあったり、山伏の指導のもと滝行などの修行ができたりと、宿坊毎に趣向を凝らしているので、チェックしてみてください。
*山伏修行情報はこちら
筆者が今回泊まった斎館では、9月に山伏になるための短期修行に参加できるようなので、真剣に検討したいと思っています。なんと、修行コンプリートすると、山伏ネームがもらえるとか。名刺に書きたいですよね。
肩書:僧侶、MBA、証券アナリスト、山伏。
イイ感じに怪しくなってきました!
*手向地区のおススメ宿坊
山伏が創作し、ユネスコが認めた精進料理
また、宿坊では山伏が創作した精進料理が振舞われます。地元で採れた山菜がたくさん使われ、旅人の身を清め、山へ向かう準備を整えます。
この精進料理は地元の食文化として発達し、2014年になんと鶴岡市は「食文化分野で日本初のユネスコ創造都市」に認定されています。
鶴岡では、地元で長年栽培され、人々に親しまれてきた野菜、果樹、穀類などの「在来作物」は貴重な「生きた文化財」であると考えられています。だだちゃ豆、温海(あつみ)かぶ、宝谷(ほうや)かぶ、民田(みんでん)なすなどが代表的な在来作物です。
県を挙げて押している米「つや姫」も抜群の美味しさ。
なんとも盛りだくさんな出羽三山。ちなみに鶴岡市はさらに「サムライゆかりのシルク~日本近代化の原風景に出会うまち鶴岡へ~」でも日本遺産に認定されています。
将来に語り継いでゆくべき、世界に誇るべき文化とストーリーに溢れた鶴岡。是非一度足を運んでみては!
→鶴岡へのアクセス方法
ライター情報
MBAアントレ坊主
漫画、麻雀、ゲームを愛する一方、絶望的な写真のセンスの無さに苦悶中の、浄土宗某寺副住職。金融機関の本店、シンガポール拠点での勤務、パリ郊外の経営大学院でのMBA取得を経て、ENYSiの創業に参画。