オヤジの欲望渦巻く神田で、密教の瞑想法 阿字観(あじかん)を体験
2017年6月30日
しとしと降る雨。ベタベタする肌。ムカムカする湿気。そう、梅雨。
6月生まれの坊主ですが、梅大好きですが、どうしても好きになれないこの季節。
坊主(以下、坊):小春ちゃん、なんか、こう、スカッとすること、ないかな。
小春(以下、小): ……???
坊:炭水化物ランチの後の眠気も吹き飛ばすような、こう、シュワっとする感じ。
小: ……。(カタカタカタ)どうやら神田で阿字観できるみたいですよ。
坊:アジカンか…。いいね、ロックな響きだ。懐かしいよね、アジカン。
小:知らないです。アジカン。
ということで、始まって1300年くらい経つものの、まだあまり浸透していない阿字観が高野山までいかずとも神田で体験できると聞き、早速行ってきました!
目次
- ・密教の瞑想法、阿字観
- ・ステップ1:息に意識を集中する、「数息観(すそくかん)
- ・ステップ2:声とともに息を吐きだす、「阿息観(あそくかん)」
- ・ステップ3:残ったモヤモヤを吐き出しつくす
なかなかに怪しい
早速、開催場所の神田にあるビルに行ってみる。怪しさ満点の扉をこじ開けてみると、既に20人近くの参加者が。外人さんもいる。
坊:すみません!撮影していいですか?
事務局:阿字観が終わった後はいいですが、最中はダメです。
坊:ほお。
まあ、そりゃ瞑想中にパシャパシャされたら集中できないよね、ということで断念。
それぞれ、下に敷くタオルと座布団を渡され、座る。講師は、高野山は金剛三昧院の久利住職。軽妙なトークで場を和ませる。
*金剛三昧院について
密教の瞑想法、阿字観
坊:そもそも、阿字観ってなんですか?
久利(以下、久):真言密教における瞑想のことです。座禅のようですが、座禅との違いは警策(けいさく)という棒でピシッと打たれないことです。
坊:バンドじゃないんですね。なんで「阿字観」っていうんですか?
久:バンドでもランボーが怒った国でもありません。
「阿」はサンスクリット語で、①すべての始まりの言葉(ちなみに、日英仏含むいろんな言語で、「あ・a」は最初の言葉)、②密教で一番大事な仏さまである「大日如来」および我々の住む宇宙そのものを表す、ということでとても大事な言葉です。
その字を観ることにより、仏さまと一つになり、自分の中の宇宙を感じるのです。
“阿”の字
坊:(アフガン…?)。なるほど。なんだかよくわからないですが、すごそうですね。
久:自分の中に仏さまになれる素質があることに気づき、生きたまま仏になれることを知ることが、瞑想の目的です。小難しそうに聞こえるでしょうが、まずはやってみましょう。
坊:文字にするととても怪しいです。まあ、やってみましょう。
ステップ1:息に意識を集中する、「数息観(すそくかん)
まずは、両足の裏を逆の足のももの裏につけるように足を組み、左手を下にして手を重ね、頭から串が刺さっていることをイメージする。目は閉じていても、うっすらと開けてもいい。
阿字観のなかでも、初心者向けの「数息観」、「阿息観」をご指導いただく。「〇〇観」は、全部で五種類あるとのこと。
久:数息観は、鼻で息を吸い、口から息をゆっくりと吐き出し切ります。
坊:鼻炎気味でして、鼻が詰まっているんですが。
久:がんばってください。
坊:脚が痛くて、組んでいられないのですが。
久:楽な姿勢で座っていただければ、それでよいです。大事なのは、リラックスすることです。息と一緒に、悩みとか、こころのしこりとか、もやもやしたものを全て吐き出しましょう。
ステップ2:声とともに息を吐きだす、「阿息観(あそくかん)」
久:阿息観は、鼻で息を吸い、「阿~」と唱えながら、息をゆっくりと吐き出し切ります。
坊:神田の中心で、阿を叫ぶわけですね。正直、ちょっと恥ずかしいんですが。
久:大丈夫です。慣れている常連さんたちに合わせてつぶやくだけでも問題ないです。
小:坊主さんはいちいち古いです。
あー アー ぁー あぁー ア阿~ ぁアァぁぁぁー アぁあァァアぁぁ阿~~~
あら、なにこのライヴ感。みんなの声が反響して神秘的な、それでいて熱のある感じ。
拙僧が昔、修行で夜に何時間もロウソクに囲まれて念仏唱えていた時の陶酔感を思い出すような。
はじめてレディオヘッドのcreepを聞いた時に感じたような、静かに激しい感覚。
小:だから、いちいち古いです
ステップ3:残ったモヤモヤを吐き出しつくす
30分ほどで瞑想は終了。
組んだ足をほどき、頭からはじまり自分の気になる部分を触り、最後に床に手のひらをつけて、吐き出し残したモヤモヤを出し尽くす。
密教、すなわち秘密の教えだけあって、日常的に触れることはあまりない阿字観ですが、姿勢と呼吸を整えると代謝がよくなり、心も身体も健康になることが期待されます。
坊:残り三つの阿字観実践方法も是非試してみたいところです。
久:また是非高野山にもお越しください。
小:お話も面白くて、且つタメになりました。他のお坊さんの話も聞いてみたいです(但しイケメンに限る)
神秘体験を終え、一歩ビルの外に出ると、そこはオヤジの聖地。居酒屋、キャバクラ、マッサージ。現代の欲望曼荼羅。
急に現実に引き戻されちゃったなと思いつつ、駅近くの居酒屋でサバをつつく。モヤモヤが晴れてスッキリしたからか、妙に美味しく感じる。
夜の神田ネオン
小:お腹すいてただけじゃないっすか?
冷静に振り返ると、外から見たらヤバい集団だと思われかねない光景だったのは理解できます。でも、こんな世界を生き延びねばならない我々現代人だからこそ、自分なりに心身を整える術をもっていることはとても大事なのだと、改めて思った次第です。
少しでも気になる方は、自分が実際どう感じるかを確かめてみるためにも、一度体験してみることをおススメいたします!
*阿字観スケジュールはこちら。
ライター情報
MBAアントレ坊主
漫画、麻雀、ゲームを愛する一方、絶望的な写真のセンスの無さに苦悶中の、浄土宗某寺副住職。金融機関の本店、シンガポール拠点での勤務、パリ郊外の経営大学院でのMBA取得を経て、ENYSiの創業に参画。