山中醤油醸造が“美味しいワケ”
2017年6月30日
日本の伝統食に欠かせない調味料の一つ「醤油」。一家に一つは必ずある「醤油」。今回は、いつもお世話になっている旅のコンシェルジュ小山さんに、先日訪問された石川県加賀市にある山中醤油酒造についてのお話を伺いましたのでその体験談も合わせてご紹介します♪
目次
- ・醤油っていつからあるの?醤油の歴史を紐解く
- ・醤油のおいしさのヒミツとは?
- ・知っておきたい醤油の効果とは?
- ・醤油はどのように作られるの?製造工程を辿る…
1.醤油っていつからあるの?醤油の歴史を紐解く
●醤油のルーツは中国だった!
醤油の「醤」は、“ひしお”と言い、古く中国から伝来した「醤-ジャン」に由来すると言われています。「醤」は、食材を塩漬けにして発酵させたもので、動物性の魚醤・肉醤と植物性の草醤・穀醤に大別されます。
穀物を原料とした「穀醤-こくびしお」(現在の味噌にあたる)からしみ出した液「溜まり」が改良したものが「醤油」の原型で、それが油のような液体であることから「醤油」と名付けられました。
●日本の醤油は関西出身?!
1580年頃、日本で最初のしょうゆ屋さんと思われる玉井醤が、みそ・しょうゆ業を始めたといわれ、1588年(天正16年)には、紀州から100石(約18000L)のたまりしょうゆが大阪に送られた記録が残っています。この頃、大阪の町人衆の間では、しょうゆはすでに日用品であったとか‥。一方関東では、しょうゆは伝わっていたものの製造には至らず、上方(関西)から運ばれてきたものを使っていました。都から運ばれることから「下りしょうゆ」と呼ばれ、珍重されていました。
●濃口は江戸っ子ならでは!
江戸時代に入り、元禄から享保時代(1688~1736年)になると、江戸の人口が増加し、この頃から、江戸っ子の好みにあった濃い味のしょうゆが作られ始めたそうです。関西からくる「下りしょうゆ」に対して、「地回りしょうゆ」といい、今の「こいくちしょうゆ」にあたるものです。
日本は四季の変化に富み湿度が高いため、この気候を利用した、醤油、味噌、納豆などの発酵食品が、日本の食文化の歴史の中で創意工夫されて発達し、現在の食生活に欠くことのできないものとなりました。
2.醤油のおいしさのヒミツとは?
食べ物の味は基本的に甘味・酸味・塩味・苦味で構成されていると言われていますが、この4つの味にもう一つ“うま味”という要素が欠かせません。
醤油はこのうま味成分をたっぷり含んでいます。
このうま味成分に大きな働きを担っているのが、グルタミン酸。良質な濃口しょうゆには、このグルタミン酸が1.5%ほど含まれています。
これは、食塩含有量のほぼ10分の1。実は、最もおいしいと感じられる塩味とうま味の比率がまさに10対1で、しょうゆ中の塩味とうま味成分としてのグルタミン酸は、その比率に近く、バランスのとれたおいしさとなっているのです。醤油が奥深く、繊細な味わいなのは、麹菌、乳酸菌、酵母といった微生物が行う“発酵”の働きによるものだと言われています。
【5つの味の中身】
1.甘み
小麦に含まれるでんぷんがブドウ糖に変わり、一部が酵母の働きでグリセリンなどの糖アルコールになります。
2.酸味
乳酸菌の働きで約9種類の有機酸が含まれています。
3.塩味
海水の5~6倍の濃度(甘みや酸味により、やわらげられています。)
4.苦み
アミノ酸やペプチド類(酸味、塩味と一緒に存在することでコクになっています。)
5.うま味
約20種類のアミノ酸。
3.知っておきたい醤油の効果とは?
●消臭効果
醤油には、アミノ酸の一種のメチオノールの働きによる消臭効果があり、この効果を利用して、魚や肉の匂いを消します。
●加熱効果
加熱効果醤油の中のアミノ酸とみりんなどの糖分が加熱によりメラノイジンという芳香物質ができると食欲をそそる香りが発生します。
●静菌効果
醤油には、適度な塩分、アルコール、有機酸などが含まれているため、大腸菌などの増殖を抑止する効果があることから、佃煮などはこれで日持ちすると言われています。
●対比効果
一方の味が強く、他方の味がわずかな場合、主体の味がより強く感じられる。おしるこの仕上げに塩をひとつまみするのと同じ効果があると言われています。
●抑制効果
塩辛いものに醤油をたらすと塩辛さが抑えられることがあり、これは醤油の中に含まれる有機酸に、塩分を和らげる力があるため起こる現象と言われています。
なるほど〜。醤油にはこんなにも沢山の効果があったのですね。意外と知らなかった醤油の効果に、単純ながらも、さらに魅力が増しました^^
4.醤油はどのように作られるの?製造工程を辿る…
山中醤油は、明治30年の創業。オーナー小西さんの醤油蔵は、自前のもろみ蔵で加賀丸大豆100%、国産小麦100%の原料を使って、創業当時から変わらない醤油づくりをされています。醤油は一般的には濃口醤油、淡口醤油に分けられますが、石川県では“旨口醤油”という独特な醤油が有名のようです。
(私は今回初めて知りました…)
加賀百万石の食文化と共に発展してきた旨口醤油は、程良い甘さとまろやかさを持ち合わせており、その絶妙な味わいは、料理の味を整え、素材の持ち味を引き立てると言われています。また、日本の醤油生産量の8割以上は濃口醤油。薄口醤油の生産量は約13%、旨口醤油などはその他の部類となり、希少価値が高いとされています。
醤油の主な原材料は、大豆・小麦・食塩、そして水。まずは醤油の主原料である、大豆と小麦の加工処理を行うそうです。
大豆は一晩以上水につけて膨潤したところで圧力をかけて蒸煮します。小麦は焙煎し、くだいて荒い粉末状にします。大豆は蒸煮の時間が大切なんです。きちんと蒸煮されていないと醤油の濁りにつながるので、時間をかけて行うそうです。
と、醤油についての知識が整ったところで、いよいよ醤油の製造工程へ。
小麦の加工処理をしています。
大豆を蒸す大きなタンクです。
麹室(こうじむろ)
製麹(せいぎく)とは大豆と小麦、麹菌を混ぜて、麹を作る工程。蒸された大豆に、乾燥させた小麦をまぶします。そこに麹菌を混ぜて温度と湿度を調整しながら「麹室(こうじむろ)」と呼ばれる場所に入れるんです。麹づくりは職人の腕の見せ所。常に室の温度と湿度を保ちながら、麹の状態をチェックするそうです。
諸味を布で包んで搾ります。
こちらは諸味を搾って醤油にするプレス機です。昔ながらの方法で布に包んで搾っています。搾った醤油はまだ火入れをしておらず、これを一般に生醤油と呼ばれます。一つ一つの行程を、人の手で行って、人の目で確かめながら、醤油づくりをしているのが小西さんの醤油蔵ならではのこだわり。
このように、醤油づくりは、とても手間と時間がかかるんです。じっくりと発酵・醸成してつくられるからこそ、旨みや風味が生まれるのですね。また、今回、はオーナーの小西さんにもコメントをいただきました。
<オーナー小西さんコメント>
・現在、加賀市に実在する蔵は5軒程度となり、山中醤油醸造はそのうちのひとつ。自家製の蔵で醸造しているので、ここでしか出せない旨味がだせる。
・醤油は夏場前から仕込み、約一年ぐらい寝かせて作る。
・もろみ菌はそれぞれの特徴により、醤油の味の違いがでる。
・蔵の見学は事前の連絡があれば可。(9月〜11月の時期が見学可)
・おすすめの醤油は、“富士”と“蔵魅”。
(①富士→塩辛い /②鶴→普通 /③白菊→甘め /④蔵魅→無添加)
醤油を調べてみると奥が深く、まだまだご紹介したいことが沢山ありますが、今回はこの辺でおしまいに。。。
さらに醤油について知りたい!という方のために、おすすめの本とWEBサイトをご紹介します。
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醤油をもっと知りたい方はこちらへ ➡️ 職人醤油
ライター情報
yacco(やっこ)
ウェディング、ホテル業界にてプランナー、総支配人補佐を経験後、ナチュラルコスメのPR、商品開発に従事。その間、ヨガ、マタニティヨガインストラクターの資格取得。数々の経験を経て…ようやく行き着いた先は“美と健康”。アラサーからアラフォーに差しかかり、キャリアとプライベートのバランスに悩む楽天家。よく笑うが、その声は壁を越える。